椿の死淀(つばきのしでん)

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¥3500(税込)

【椿】

第19方面軍の再編にあたり、連隊長と思しき人物が積まれた書類に目を通していた。
天気に恵まれ、青空の下、窓から入るここち良い太陽の光を背に、時折目をこすっている。
そうして各部隊員の資料、及び任務達成報告書を眺めていると、そこに死体処理班からの追加の報告書が届けられた。

「……”華は散った”ようだな」

書類を受け取ると、軽く目を通しただけで、また元の書類に目を戻した。

「はい、滞りなく」

第19方面軍、通称号「椿」
他の部隊とは違い、重火器は装備しつつも鍛え抜かれた剣技で静かに敵を背後から強襲・撹乱することを目的とした。
常に別の部隊との連携の下で任務を行い、敵部隊を挟み撃ちにする際、互いの重火器の使用による同士討ちを防ぐ為である。
ゆえに、「椿」の部隊は剣術の才能に秀でた者のみが選ばれた。
仲間の弾に被弾しないよう、味方部隊の動きを把握する等の状況判断能力も必要になるため、
エリート部隊の一つとされている。

彼らの任務の後には首から上がない死体が数多く横たわり、無数の頭が地に転がっていた。
まるで椿が散ったようだと、誰かが息を呑んで呟いたことが由来とされている。

「”椿”は後で目を通しておく、下がっていいぞ」

書類を見ながら告げられた報告官は、その命に反して一歩前に歩み出ると、

「実は、一名行方が分からなくなったと……」

その言葉に、連隊長は顔を上げた。

「任務達成後、その隊員が正体不明の女と戦闘、それ以後共に消息が不明です」

「捕まったか……敵の数は?」

「斥候の話では、一人だったと。その姿はまるで――」

「忍か?」

彼のまるで知っていたかのようなそぶりに、報告官は驚いた。

「風貌に関しては情報が曖昧な為、書類には載せず口頭でのみ報告するよう承ったのですが、なぜご存知で?」

「知らん。だが、”椿”とまともに渡り合えるのは、忍の者くらいだろう。そう訓練させている」

どこか自慢げに微笑みながら、彼は見ていた書類を閉じた。

「シデンを呼べ、彼女に追わせる。任務が終わったばかりで酷ではあるが、あいつ以外適任者はいない」

「それが……」

「我等の作戦領域にいたということは、恐らく敵が雇った忍だろう。情報を聞き出す必要がある」

「その消息不明の隊員というのが、彼女です……」

その言葉に連隊長の表情は一変し、慌てて”椿”の報告書を手に取った。

「……バカな、戦闘能力は”椿”一だぞ!それを、たった一人の……」

報告書を見る彼の後ろ、窓から見えていた青空は、いつしか曇り始めていた。

 
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