変化の美小虎(へんげのみこと)

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¥3500(税込)

【変化】

「ふぁ……ぁう……」

裏門の新人の警備兵の大きな欠伸を見かねて、横にいた彼の先輩が強くたしなめた。

「もっと緊張感を持て!正門よりも裏口の方が昔から敵に狙われ易いもんなんだ、分かってるのか!!」

「す、すいません……ネコの欠伸をみてたら、つい……」

「ネコ?」

そういって後輩の指差す先に、尻尾の根元に大きなリボンを着けたトラ柄のネコが一匹、小さい口で大きく欠伸をしていた。

「ありゃどこかの飼い猫だな、でっかいリボン付けてもらって……」

「リボンってことは、メスですかね?」

「さあな。ネコばっかり見てないで、ちゃんと回りを警戒しろ」

はい、と返事をすると、新人はライフル銃を腰に寄せて構えなおした。

とは言え、いつものように特に何事もなく過ぎるのどかな時間は、次第に緊張感を解いていく。
小耳に挟んでから、ずっと気になっていたあることを新人はふと思い出した。

「先輩……」

「何だ?」

「忍者っていると思います?」

「は?忍者?」

「盗み聞きするつもりはなかったのですが、ある国の一個師団が数人の忍者のような敵に壊滅させられたと……」

新人の恐る恐る小声で話すその内容に、先輩は大きくため息をついた。

「お前な、今の時代に本物の忍者なんかいるわけないだろう」

「しかし、その話をしていた士官は情報部の制服を着ていましたし、あの雰囲気は――」

「冗談話でもしていたところを聞いたんだろう。そもそも、お前はどう思うんだ?」

「いたら見てみたいかなと」

「アホか。いいか、忍者だろうが何だろうが、我々の仲間であれ、ここに現れた者に対しては射殺許可が出ている、そのことを忘れるな」

「はい、何人たりとも許されないと、そう聞いてます」

「そうだ、近づくこと自体許されていない、何故だか説明してみろ」

――この裏口がVIPの出口専用で、入り口としての役割を担っていないからよね?――

「そういうことだ、よく分かってるじゃないか……………………え?」

先輩は不思議そうな顔をして新人を見た。
新人も、同じような顔をして、お互いが顔を見合わせた。

咄嗟に周囲を見回しながら、二人は銃を構える。

「誰だ!」

先輩が叫ぶ。
周囲に人影は……ない。
さっきの声はどこから聞こえたのか、風の木々を揺らす音だけが二人の間を吹き抜けていく。
初めての事態に、新人は呼吸が詰まりそうになった。

(気のせいじゃない……確かに聞こえた……女の声が)

目をつぶり、恐怖ごと飲み込むかのように、喉をならす。

(落ち着け……落ち着くんだ……)

意を決したように目を開く。
目の前に、先ほどのネコが尻尾を立てながらこちらを見上げていた。

「おいお前、ここは危ないぞ、早くどっかに――」

ドサッ

「っ!?――」

すぐ横で起きた大きな物音に、慌てて銃を向けた。
先輩が…倒れていた。

「せ、先輩?……先輩!!」

――忍者を見てみたい、そう言ってたわよね?――

「っ!?」

再び、あの声がした、その声に新人は恐怖で尻をつくも、震えながら銃を向ける。
女が一人立っている。
その姿は紛れもない、忍の衣装を身にまとった女が一人、その風貌に目を奪われた。
腰にした大きなリボンを風が揺らしている。

「…そのリボン――」

彼女がニコリと微笑むと、つられて彼もひきつった笑みを返した。
そこで、目の前が暗くなった――

音もなく裏口の扉が開く。
倒れている二人をよそに、一匹のネコが悠々と施設の中に入っていった。
そしてゆっくりと、音もなく扉が閉まる。

その様子を塀の上から眺めている黒猫がいた。
一度大きく欠伸をすると、暖かな日差しの下、気持ちよさそうに眠るのだった。

 
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