大蛇の蛇詠(おろちのいよ)

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¥3500(税込)

【大蛇】

皆が身体のどこかに変わった刺青を入れフードをかぶるその様相は、明らかに他の忍者とは一線を画していた。
他の忍び集団同様、彼らも一つの里を形成しその場所で仲間と共に育ち技を磨いてきた。
だが、やはりここでも他の忍とは違う点があった。

まず、彼らに名前は与えられなかった。
彼らの里や集団にすら名前がなかった。
唯一彼らを束ねる頭領だけが、代々”蛇詠(イヨ)”と名乗れる習わしだった。

一つ、頭領は常に門外不出の奥義書を保持しなければならない。
一つ、頭領の選抜は古(いにしえ)の法に基づき、先代の頭領から奥義書を奪い殺めた者がなること。

そんな厳しい掟を背負えるとは思えないほどの若き頭領がつい先日誕生した。

「頭領……お願いがございます……」
「ん?なに?」

大きなおむすびを片手に口をもぐもぐさせる彼女の周りには、ずっと年上であろう今では部下になった上忍達に囲まれて
食事を兼ねた着任式のようなものが開かれていたのだが……。

「頭領の召蛇威(メジャイ)が、拙者のむすびを食ろうておりまして……」

今、口をほおばる彼女の後ろから伸びる大きな蛇が、彼の目の前で綺麗に置かれていたメシを御膳ごと
犬のように音を立ててむさぼっている。

「この子お腹すいてるの」
「……あの、拙者も腹をすかせて――」

大蛇が一つ、おおきなゲップを彼に浴びせた。

「ごちそうさま、って」
「……そのようで……」

自分より一回り二回りは下の頭領に殺気をあらわにする彼を、まるでものともせずにあしらう彼女。
どのように先代を出し抜いたのか、他の幹部達も静かに探っていた。

メジャイと呼ばれる蛇のような生き物を召喚し戦わせる彼らの技は、一人につき一匹、二匹使役出来る者は稀だった。
そんな中、彼女が八匹を使役することはまだ誰も気付いておらず、そのうえ相手の召喚したメジャイまでも
自分の術のように操り、本来の主であるその術者を殺めさせる”共喰威”を可能としていた。

「なんか面白いことないかな…」

彼女が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の名で恐れられるのは、この数年あとの話である。

 
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